僕が、陶芸を志したとき、修業先に選んだのが有田焼の窯元だった。原型、絵付け、窯焚き等々、様々な工程の中で、その道のプロがいた。工場の中では、ベルトコンベアの上を素焼きの皿が周り、皿板をいっぱい積んだ軽トラが町内を行き交っている。土を触りながらじっくり手作りしたいという僕の思いとは裏腹に、新人にできることといえば、窯づめばかり。いつの間にか陶芸への情熱も、コンベアに乗って、同じところをぐるぐる回っているような気持ちになった。
そんな中、出会ったのが石原亮太君のお父さんだ。有田の隣町、波佐見町にある窯元で、デザイナー兼原型師として勤めながら、プライベートでも様々な作品を作っていた。お父さんのアトリエは、陶器に限らず、家具や什器等も手作りで、気持ちの良い空気が流れていた。僕は休みのたびに石原家のアトリエに通い、型づくりから窯の焚き方まで様々なことを教えてもらい、今まで疑問に思っていた分業制のことや、器のデザイン等について、たくさん話した。今考えるとかなり未熟で、失礼な質問もぶつけた気がするが、お父さんは、僕の話を笑いながら、それでも真剣に聞いてくれた。僕はそんな日々の中で、段々やる気と自信を取り戻していった気がする。「やりたい事を実現する場所は、自分で作るんだ」そんな思いが膨らみ、お世話になった窯元を離れ、夜勤のバイトをしながら自分の制作を行うようになった。
僕は、石原君とは兄弟弟子のような関係だと思っている。あの時、お父さんに教えてもらったことを自分なりに解釈して、各々自分のブランドを持つようになった今、また一緒にものづくりが出来ることが嬉しい。
今回、2つのコレクションを発表する。石原君が作った型に、火山灰を調合した釉薬で仕上げた「ASHシリーズ」と、鹿児島の「坊津」の土で、石原君がろくろで作陶する「CULTIVAITEシリーズ」。
独立し、すべての工程を経験したことで、産地の成り立ちが身に染みて分かるようになった。このコレクションは、鹿児島と長崎で各々が活動しながら、「その道のプロ達」をはじめ、色々な方々に助けてもらい築き上げた協働作品だ。
僕たちが一緒に描いている未来には、笑顔あふれる食卓がある。
ONE KILN 城戸 雄介