陶芸というと、人里離れて、ひとり黙々と勤しむものというようなイメージをされがちだが、「ONE KILN」は、鹿児島市の繁華街から車で10分ほどの住宅街にある。僕が陶芸を志したのは24歳の頃、気になる作家に電話をしてみたり、京都の職業訓練校を受けたり、ジタバタと動いたけれど全滅。その未来に閉塞感を感じた。
結果、設計事務所時代の伝手で佐賀の窯元を紹介してもらい、陶芸生活を無事スタートできることとなったが、東京から佐賀へ引っ越す際、友人たちには、城戸は山奥で仙人になるらしいなどと、冗談で笑われたりもした。今の場所に「ONE KILN」を立ち上げたのは、そのようなイメージを振り払い、ものづくりに興味がある人が気軽に働きたいと思えるような、開けた場所にしようと思ったからだ。
そんな中、ONE KILNのアルバイト募集に応募してきてくれた岩切秀央(しゅうお、以下シュウ)たぶん24歳の頃だった。大学を卒業後、一度は社会人となりながらも、陶芸のことが諦めきれず、大学院に入り直すタイミングだった。陶芸を専攻しているだけあって、知識も豊富なシュウには、釉薬作りなどをはじめ、様々な場面で助けてもらった。
弟子だ師匠だとこの世界ではよく言われるけれど、僕は一緒にものづくりをする仲間だと思って、6年間共に器作りに励んできた。シュウから神妙な顔で、独立したいという話を切り出された時には、寂しい気持ちもあったが、若い頃の自分が感じた閉塞感を壊したくて、ひとつの提案をした。
「独立後、シュウが考えた形と、ONE KILNで使っている坊津の土で、一緒に器を作ろう。」
「夜間飛行」でサン=テグジュペリはこんな言葉を残している。
人生には解決法なんかないのだよ。 人生にあるのは、前進中の力だけなんだ。 その力を造り出さなければいけない。 それさえあれば解決法なんか、ひとりでに見つかるのだ。 先日、シュウから子どもが誕生したとの嬉しい報告をもらった。作ることが大好きで、忍耐強く、まさに陶芸家向きのシュウのことだから、これからもきっと良い器を作り続けていくことだろう。ひとりで頑張ることももちろん、大切な時間だが、僕は家族が増えることで新たな「前進の力」を造り出すことができた。
壁にぶち当たることもあるかもしれないが、いちどは同じ窯で器を作ったもの同士、とにかく作り続けよう、これからも。
岩切秀央の器は、7月2日午前10時よりonekiln.jpにて発売します。
以下のリンクより▼
https://onekiln.jp/search/designers/shuo-iwakiri